夜空という黒い布を彩るのは、無数の星と……無数の花火。赤、青、黄色、色とりどりの花びらが儚く空を舞う。窓は完全に空いていて、優しい夜風と祭り囃子、そして人々の感嘆の声が入ってくるのだ。
「綺麗だねぇ」
「そうだね」
机の上には、輪切りの檸檬とはちみつが入った炭酸飲料が置いてある。ゆっくりとそれを口に含むと炭酸が弾けて、優しい檸檬と蜂蜜の優しい味が私を包み込んだ。
「それにしても、よくこんな良い部屋がとれたよね」
そういえば、思い返してみればそうだ。大きなお祭りをやっている日に、こんな大きくて綺麗な部屋があいているものだろうか? たしかに高い部屋だけど、この世の中にお金持ちなんてたくさんいる。
この部屋を取りたいとおもう人はたくさんいるはずなのに……。
「まあ、確かに僕たちがきた日にお祭りをやっていたり当日に一番良い部屋が空いているなんておかしいよね」
「……やっぱりご都合主義だよね。まあ、神託とか色々と関係し足りとかしてるんじゃない? 知らないけど」
「ありそう(笑)」
だって今までの行動は全て神様が決めた物語にそって進んでいたんだから……せめて、終わりを迎えるカイトへの贖罪と永遠を受ける私への祝福……とかなのかな?
うーん、わからないや……でも、花火が綺麗だからいいよね‼
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!