「エイカ、エイカ、起きて……」
ほのかに暗いカーテンのしまった部屋。目をゆっくりと開けると、青い髪の幼馴染みとその頭の上に乗った黒猫が見える。
「ようやく起きた……紅茶、入れたからこっち座って一緒に飲もうよ」
「……ありがとう」
ベッドから起き上がり、近くにあった椅子をひいて座った。机の上には、ミルクと砂糖が少量はいった紅茶がおいてある。私は、それを口の中にいれて喉の奥へ通した。
「あつ……」
「当たり前だろ、入れたばかりだから……火傷してない?」
「うん」
「そっか」
因みに、エドナの方を見るとお皿にはいった猫用のミルクを一生懸命なめている。かわいい、とおもいつつ頬をついて、カイトの方をもう一度見た。
カイトのカップの中には、黒く染まったコーヒーが入っていた。多分無糖のミルクなしだと思う。よくあんな苦い液体を好き好んで飲むよね。かっこつけるためにたまののむけど、正直あまり好きじゃない。
しばらくじーっと見つめてみた。すると、カイトが興味深い話をふってきた。
「そういえば、この国に来てから僕はなんとなく調子がよくなった気がするのは気のせいなのかな?」
「といいますと?」
「いつも、ちょっとだけあった気だるさって言うのがなくなったんだよね。本当にわずかな変化だけど……」
「ふーん、面白いね。私はむしろその逆だよ。最近なんだか調子が悪い。ずっと、頭が痛いんだ」
するとカイトはおもむろにバッグをあさりはじめる。そして、ひとつの小さな袋を差し出してきた。エドナは、まだ幸せそうにミルクを頬張っている。
「これ、僕がいつも使ってる薬。作ったのは僕で、アレルギーとかはないはずだから安心して使って」
「ありがと。あとで飲むね」
そういって、袋をポケットにしまうのであった。薬、効くといいな。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!