荷物をまとめて、代金を支払って、宿屋を出て……私たちは、再び祭壇の場所へと向かっていた。ここからはそこまで遠くないけれど……それでも、早くしないとエドナの身が危ない。だから、みんな自然と早足になっていた。
「エイカ、疲れてない?」
首をブンブンと横に降る。別に、疲れてなどいない。むしろ早く助けにいかないといけないから……疲れなんて言う感情を表に出してはいけない。一番辛いのはエドナだ。
「それなら良いんだけど……あと一時間くらい歩いたら少しだけ休憩するからそれまで我慢してね」
『ありがとう』
口パクで伝えると、カイトは優しく微笑み返してくれた。
「やっぱりエイカちゃんとカイト君って仲良いわよね……本当に羨ましいわ」
「まあ、村にいるときからずっと一緒にいますからね」
うんうん、生まれたときからずっと一緒に育てられてからね~。よくお互いの家に泊まったりとかしたな……今となっては懐かしいや。
「私たちの世界には友人なんてものは存在しないからね……仲間、という意識はあっても恋愛、友情、そんな感情は存在しないわ」
勿論、二人のことは大好きだけどね、と朗らかに笑って言うイフリートさん。多分、その好きと言うのは友人としてではなくきっと主従関係からうまれている感情……なんだろうな。
「大丈夫だから、二人のことはちゃんと守るわ。私とウンディーネちゃん……ここにはいないけれどシルフちゃんも」
(ありがとう、心強い味方がいて安心できるよ)
心の中で、私はそう言葉を紡いだ。音にはできなかったけれど、気持ちが伝わったのか三人は優しく笑っていた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。