第89話

二章 四節 楽しむ時間
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2020/11/15 15:09


 右手には綿菓子、左手にはリンゴ飴。両手には美味しいもの、そして頭にはカイトとお揃いの狐の仮面。いきなり始まったお祭りだけど、私は結構満足をしていた。

「お祭りって結構楽しいね‼」

「そうだね……それにしてもエイカ、食べ過ぎじゃない?」

 食べ過ぎって……まあこの前にも焼きそばとかラムネとか食べたり飲んだりしているけど……。でもよくない⁉ 和国式のお祭りなんて早々見られないんだよ⁉ ちょっとくらいいいじゃん

「私も食べ過ぎだと思うぞ……」

 と、首から小さなネックレスを下げたエイカがいった。このネックレスは、さっきカイトと射的で勝負した時に私が狙ってたものなんだよね。まあ、取ったのはカイトなんだけど……。

 私あんまり射的って得意じゃないんだよね……結局なにもとれなかったし。それにくらべてカイトはすごいんだよ。狙ったものは何でもとっちゃうし、ネックレスの他にもお菓子とか色々とっていたの。

「そーですかそーですか、いいじゃん‼ せっかくのお祭りだよ? 楽しもう‼」

「……まあそれもそうだね」

 珍しくカイトが同調してくれた‼ 一緒にいられる最後の時間を大切にしたい、って気持ちは同じなのかな? 会えなくなったあとの寂しさを埋めるための思い出を作ってくれるのは本当に嬉しい。

 カイトはしんじゃうし、エイカにも寿命がある。二人とは遠かれ遅かれ死別しなければいけない運命にあるんだ。人間をはじめとする生物には寿命がある、それは当たり前のこと……けど私は当たり前から遠い存在になってしまうんだよ。

「どうしたのエイカ?」

「ううん、何でもないよ」

 暗い感情に蓋をして、笑顔それを押し潰す。そうだよね、今は楽しまないといけないんだ。こんな暗い感情に潰されている暇なんてないんだよ‼

「それじゃあいこうか‼」

 そういって、私たちはまた人混みのなかを進み続けるのであった。

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