「それじゃあ、ゴーレム頼んだよ。相手を徹底的に捻り潰して」
『わかりました。ご主人様』
しょっぱなからこのサイコパス感溢れる会話を聞いて、緊張感がぶっ飛んだ。むしろ、緊張感というよりカイトに対する恐怖心しかわいてこないよ。
すると、カイトが私にランタンを渡していった。
「エイカ、まずゴーレムが三十秒くらい奇襲をかけて数匹の命を奪ってきてもらうからそれからすぐに突っ込むよ」
「わかった」
「それじゃあ、3、2、1…go!」
そういって、ゴーレムさんは突っ込んでいった。レベル4の魔物に、どのくらい効果があるのか。まずそれで見極めてどの攻撃をするか決めないといけない。
中をはしっこから覗くと、ゴーレムさんがすでに一匹の命を奪っていた。やっぱりカイトの技術は凄いんだなと改めて感心した直後、30秒がたったらしくカイトは中へ飛び込んでいった。
私も、慌てて中へと飛び込んだ。中は、結構生臭く鉄の臭いがした。いままでたくさんの命を奪ってきたのだろう。
「カイト、私は左側の方殺しとくからカイトは右側の方お願い」
「わかった!!」
そうして数十分間、ずっと戦い続けた。戦っていて思ったことは、一体一体は時間をかければ倒せる。すでに、一匹は殺せた。けれど、それは一体だった場合だ。
何体も何体も応戦していくうちに、どんどん疲れていく。だから、レベル4指定されているんだなと痛感した。
私もカイトもどんどん疲れていった。ゴーレムに関してはもう壊れかかれてしまっている。結構辛い、このままじゃあ本当に死んでしまう。どうすれば良いのだろうか
「エイカ!希望を捨てるな。まだ勝てる見込みはあるから戦い続けて!」
「…そうだね!」
まだ、勝てないと決まったわけではないのだ。希望を捨ててはいけない。このまま、本当に死んでしまったらエドナが助からなくなる。
けれど、心境が変わったからって戦況は変わらない。むしろ、どんどん酷くなっていった。こっちは二人なのに相手は数十匹。一匹倒したところでまだたくさん残っているのだ。
「…エイカ!一回引かないと危ないかもしれない。どうする?」
「…」
私は、なにも答えられない。エドナを助けるためには、ここで全て倒さないといけない。そして、red wolfの骨を回収する。すべて倒さないと、red wolfの骨を回収するのはできない。
(どうしよう…このままred wolfを倒せて、エドナも救える良い方法はないの…?)
応戦しながら、頭をフルに回転させる。今、手に持っているのは桜の剣。カイトは、もともと家から持ってきていた剣を使っている。だめだ、考えても上手く頭が動かない。
その時、誰かが私の事を呼んだ気がした。
『エイカちゃん!私をそこに呼んで!』
目の前に、炎の魔方陣が浮かび上がった。きっとこれは…イフリートさんの魔方陣だ。根拠もないのに、何故かそう思った。そして私は叫んだ。イフリートさんを呼ぶための呪文を。
『古の精霊イフリートよ!
約束の地で結びし千年の約束を
超えて今我に力を貸したまえ
fire of Summoning』
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。