住み慣れた森を、抜けた先。そこにあるのは、私のご先祖様とはある意味でゆかりの深い土地であった。かつて、ご先祖様に仕えた人々が命を落としていった土地、たくさんの遺恨が残る土地……[magic country]の地に、私は立っていた。
ここは、通称時計の町と呼ばれている[clock town]。時計などの、精密機械を製造する技術にたけていて、このまちで作られたものはすべて最高級品として市場に出回っているんだ。
いつもと同じような風が吹いているはずなのに、何かが違う気がしてしまう。それは、私を深淵の淵へと導くような、闇へとおと仕込んでいくようなものに感じた。この地に、歓迎されていない。そう、直感的に思ってしまったのだ……。
だけど、私が[music country]の女王の末裔であることを知っているのは、私だけだ。カイトにはこの事を話していない。勿論、エドナにも。いつもだったらすぐに伝えたと思うんだけど、私の奥底に眠る何かが、その事は誰にも言うなって言ってくるの。不思議だよね。
「とうとう来たね……」
思わず、そう呟いた。しかし、カイトやエドナは不思議そうに私の顔を覗き込んでいった。
「とうとうって……まだ、着いただけじゃん? これから調べものとかいっぱいしなくちゃいけないからまだ安心しちゃダメだよ」
「そう……だけどさぁ。元々、music countryの民の血をひいている私にとって、magic countryの土地は肌に合わないのかも……何となく、歓迎されていない感じがするんだ」
「……」
「カイト……?」
「ご、ごめん……そうかもね。多少、気候も違うだろうし仕方ないよ。sおれじゃあ、早く今日は宿屋にいこう」
「……そうだね」
何だろう、何か違和感を感じる。隠し事をしている……のかな。何処か言葉がたどたどしい。けど、相変わらずウンディーネさんは読めない表情をしていて、エドナは幸せそうに寝ている。だけど、カイトにだけいつもと違う感じがするんだ。
その違和感の正体は……一体何なのだろうか?
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。