結局ぎりぎりの時間まで宿で寝てから、夕焼けと森林の匂いが混じり合う私の大好きな時間に私は旅を始めてから一番最初に来たハジマリノシティに別れを告げようとしていた。
本当に一週間くらい前のお話なのに、遠い過去に来て、ずっとここに住んでいたと錯覚してしまうほどにたくさんのことがあったよね……。シルフさんを呼び出して、エドナの呪いを解いてイフリートさんと契約して……アリシャさんにもであった。
初めて旅、初めての出会い、初めての冒険。その思い出と記憶はこの街にある。これからも続いていく長い旅をみれば、アルバムの一ページにも満たない小さなものかもしれないけど……今の私にはたいせつなものだ。
「エドナ、エイカ、何か買い残したものとかやり忘れたこととかない?」
カイトが私たちに尋ねた。もう暫くこの街には……ううん、この森[music forest]にも別れを告げなければいけないから、確認をしてくれたのかな。
勿論、やり残したことも買い残したものももう何もない。しいて言うのであれば、これから先の[magic country]……私のご先祖様との因縁がある場所へと向かう旅が少しだけ不安なだけである。
「私は、大丈夫だ」
「私も大丈夫だよ!!」
曇りのない元気いっぱいの声で私は答える。そして、目にかかっていた鬱陶しい髪の毛を思いっきり横にはらい、二人のほうに向かってこういった。
「それじゃあ、[magic country]へ、」
『レッツゴー!!』
いつもの三人の声が賑わいを見せる街の中で響き渡った。目指すは、機械の国として高名であった[magic country]。もう滅びてしまっているけれど、たくさんの人間はまだ住んでいる。新たな出会いを求めて、いざ新しい旅へ……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。