森の道を進んで行く。ただそれだけだ。何も起こらないし何もない。まだ、三時間しかたっていないから仕方ないと思うんだけどさ、思うんだよ?だけどね、なにも起こらないただ歩くだけなの…
『おい!お前、聞こえてんのか?』
まあ、この変な声を除いてね。最初聞こえたとき驚いたけど、そのまま無視し続けたら案外平気なものなんだな~と呑気な考えだけが頭を占領した。
『聞こえてるんだったら返事しろよ』
「…やっぱり無視はよくないよエイカ。」
「そっか…」
『ようやく話をする気になったか』
謎の声もとい綺麗な毛並みを持つ黒猫は言った。
「それで黒猫さん、お名前はなんだい?」
カイトは優しい声で言った。私はカイトの後ろで様子を見ている。
「私は…名前を覚えていない。名前のないねこさ」
名前のない猫…我輩は猫であるか?私はカイトの後ろからそのまま前に出ていった。
「じゃあ名前のない猫さん、こっちはカイトで私はエイカ。宜しくね、それでなんのようなの?」
カイトを見習い優しい声で対応すると黒猫はじろしろとこちらを見てきた。
「お前たち、その格好を見るに冒険者だろ?」
そっけない態度で反射的に答える。
「だから、なに?」
その声を聞いた瞬間に黒猫は叫んだ。
「私を一緒につれていって欲しいんだ!」
つれていってほしいって…なんでいきなりなのか…私たちみたいに村を出たばっかの未熟者を?
「なんで…?」
カイトは唖然として聞き返している。
「私は、もともとは人間だったんだ。だけど人間だったときの記憶をなくして、気がついたら黒猫になっていたんだ。」
人間だったねこか…本当に人間だったのか?こいつという疑問をそのまま払拭し、とりあえず話を聞く。
「黒猫さん?この旅には目的なんてないし、危険かもしれないよ?それでもいいな着いてきてもいいけど。」
一応聞いてみるけど…本当にこの子、着いてきたいのかな?普通に私たちみたいなおかしな人間じゃない限りはついてきたいなんてことは言わないと思うけどね。もしも着いてきたい行ったらどうしようかな…
「私はついていきたい!私がどうして黒猫になったかを知りたいんだ!」
「…どうするエイカ?」
断る理由もないしここは無難に…
「えーっと…私的には別に大丈夫だけどさ、カイト的にはどう?」
カイトにも一応訪ねる。
「僕は別にいいよ。」
カイトがいいなら…大丈夫かな?
「もしかしていいのか?」
「……うん!ちょっと怪しい気もするけど一応なかまにいれてあげるよ。」
「ありがとう」
「名前はなんて呼べばいい?」
「お前たちが着けてくれ、私の名前を」
「いいの?」
「ああ!勿論、私はしばらく一緒に居させてもらうんだ。お前たちの好きな名前で読んでもらって構わない。」
私は黒猫を抱き上げながら言った。
「じゃあ!エドナ、お前の名前はエドナよ!」
適当に考えたけど気に入ってくれたみたいでよかった。
「エドナ…いい名前だな。礼を言うよエイカ。これから宜しくな、カイト、エイカ。」
カイトと声を会わせていった。
「宜しくね!エドナ」
旅を初めて三時間、これが私達に新しい仲間ができた瞬間であった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。