イフリートさん達が淹れてくれたお茶は、とても香りの良いジャスミンティーであった。
「美味しいでしょう? これね、遠くの町で作られているお茶でね……摘み立てはもっと美味しいのよ」
遠くで作られているお茶。そんな貴重なものをわざわざ使ってくれたんだね……本当に私たちの事を気遣ってくれているのがわかる。
さっき聞いた話、正直まだ信じきれてはいない。彼女が本来なら私の妹だったこと、もしそのまま進んでいたら……みんなが幸せだったこと。
「そうなんですね……」
朧気に返すと、優しく微笑みかけてくれるイフリートさん。それ以外の人はみんな、俯いてお茶をすすったりしている。
うつむいて、コップのなかを覗きこむ。するとそこにはいつも通りの紫色の映り込んでいる。
「いつか、つれていってあげるわ。凄い綺麗なところなの」
「ありがとうございます」
手元のカップで揺らめく金色の液体。いつか、時間があればその街を見に行ってみたいな。カイトはいないけど、エドナや精霊さんたちと一緒に……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。