第3話

一章 二節 お母さんを説得!!
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2020/09/03 16:36


「お母さん~」

 [music forest]の一角にある集落の中の、またその一角にある小さな家の扉が私の精一杯の力で大きくおとをたてて開かれた。

 その音は、まるで怪獣が歩くときになるような地響きのように低く……不安になってしまうような音。扉、壊れてないよね? 大丈夫だよね? ……大丈夫みたい、良かった。

 そう安堵し顔を上げた。するとそこには、私と同じような紫水晶アメジストのような美しい髪と瞳を持った女性が微笑みながら立っていた。

 この女性こそ、私を生んでくれたお母さんである。わたしの髪も目もお母さん譲りのものなんだ。

「あら、エイカお帰りなさい」

 お母さんがいつも通りの優しい口調で言った。私は、一回呼吸を置いた後に一言短い言葉を口にした。

「お母さん、ちょっと相談があるんだけどいいかな?」

「いいけど、その前に手を洗ってきなさい」

 ヒッ……お母さんの顔が一瞬鬼に見えたよ。おそろしや、母親。とりあえずそのまま洗面台に向かって手を洗う。泡が残ってないことを確認してお母さんのところへ向かった。

「よし、いいわね。それで何があったの?」

 心配するような目でこちらを見てくるお母さん。いや……もしかして、私が何かやらかしたと勘違いしていない!? 私そこまで問題起こしたことあったっけ!?

 まあ、そんなことを考えていても仕方がない。私は伝えたいことを一言にまとめてこう呟いた。

「私ね、旅に出たいんだ」

「旅…?」

お母さんは不思議そうに聞き返す。

「そう!カイトと一緒にね、歌の精霊使いと錬金術師を探しにいきたいんだ!」

 因みに錬金術とはカイトが使えるとってもすごい力!! 普通の金属を貴金属に変えたりすることができるんだ。カイトとはそれをきっかけで仲良くなったりもしたし……。

「……」

そういうとお母さんは黙ってしまった。

「えっと…お母さん?」

「はぁ…やっぱりこれも神様の導きなのかしらね…」

神様の導きって…?

「お母さん…?」

お母さんは一体何が言いたいのだろうか。

「別にカイト君と一緒なら大丈夫でしょう。行っても良いわ」

「ありがとう、お母さん」

「ただ…」

ただ…?

「貴女は、この先どんな困難があってもカイト君と一緒に乗り越えられるほどの覚悟はある?」

「勿論だよ、お母さん。」

「なら…わかったわ…じゃあ早速準備しないとね♪」

お母さんの声色が一気に明るくなった。

「えぇ!今からなの?」

思わずそう叫ぶとお母さんはきょとんとした声で言った。

「え?そうじゃないの?」

「イフリートと契約してから行きたいんだけど…」

「良いのよ!ああ、今から準備して間に合うかしら?」

お母さん…?ってわ~ひっぱんないでよ!こうして、お母さんの許可が取れたが、何故か引っ張られることとなったのだった。

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