「ついたわ……ここが、祭壇の入り口よ……あと五分位したら目的の場所につくわ」
あれから大体三時間、いつもよりと同じような道のはずなのになんだかとても短く感じてしまった旅路が終わってしまった。ここで、儀式が終わってしまえば……一生、カイトにはあえなくなるんだ。
「……皆さん、気を付けてくださいね。何となく、邪悪な感じがします。なにかよくないものが近くにいる……そんな気がします」
「……レイシアでしょうか?」
カイトが、少し緊張したような声で呟いた。すると、イフリートさんが答えてくれる。
「その可能性が高いわ……けど、大丈夫。二人は私たちが全力で守るから」
「ありがとうございます」
まず、私たちが儀式をして力を片方に集める。そして、私はレイシアのもとにいって……レイシアをこの手で殺して、エドナを助けないといけないんだ。
私たちは無言で先へと進んでいく。一緒にいられる最後の時間、声を出すことさえ億劫になるほど重い空気がずっと流れている。
「ねぇエイカ、不老不死って怖い?」
その沈黙を破ったのは、カイトの問いかけであった。
『そりゃ、怖いけど……今すぐ死ぬのに比べたら……全然じゃない』
私は歩きながら何とか文字を書き、カイトに見せる。
「そっか……ごめんね……本当ならずっと一緒にいたかったけれど」
『それは私も一緒だよ』
ずっと一緒にいたかった、大切な幼馴染み。……もう会えなくなる、幼馴染み。先程よりもっと重い空気が流れる。もう、カイトもウンディーネさんもイフリートさんも、口を開くことはなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!