「君の妹になるはずだった、彼女の人生を狂わせたのは」
はっきりと、フェニックスさんはそう言った。私の妹になるはずだったって……。聞き間違えではないはず。
あのレイシアが、妹になるはずだった? 本来だったら私の……女王の妹として生まれていて、幸せな人生を送っているはずだった……そう、はっきりとこの目の前の精霊さんはいったのだ。そういえば賢者様に聞いた話によると、レイシアは錬金術や魔術……music countryに由来するような能力を使えたらしいし……そういうことだったのか。
「え……エイカちゃん……」
イフリートさんがいつにもまして心配そうな顔で覗き込んでくる。しかし、いつものように笑顔でそれに対して言葉を返すことはできなかった。
あまりにも、ショックが大きすぎたのだ。本来なら妹として生まれるはずだった存在があったこと、それが大切な友人の妹として生まれてきたこと、そして……その彼女が、私の……私たちの幸せを壊すことを。
「……僕だって、悪かったと思っている。ほんのちょっとの出来心でして良いようなことでは確かになかった。結果として、こんなことになってしまったのだからね」
「……フェニックス、一回この話は終わりにするわ。そろそろウンディーネちゃんと……カイト君が帰ってくる。すべてがおわったら続きを話しましょう」
イフリートさんがカイト達が消えていった方向を見て言った。確かに、遠くから足音が聞こえてくる。
「そうだね」
そういって、フェニックスさんはふいと何処かへ消えていってしまった。
「……フェニックスは放っておいても勝手に戻ってくるから心配しなくて良いわ」
なんとか私が一回うなずくと、カイトの声が聞こえ始めた。
一度深呼吸をして、自分を落ち着かせた。まずは、目の前の儀式をちゃんと成功させないといけない。成功させてから、この話についてより詳しく聞くのだ。
「お待たせしました、準備が整いました」
いつも通りのサファイアのように綺麗な青色の髪を、music forestの柔らかい風で揺らしているカイト。何も変わらない、いつも通りの光景。
もうすぐ、この幸せで平凡な光景は終わりを迎える。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!