第107話

四章 一節 夢
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2020/12/23 16:22


『♪~るりらるりら』

 何処からか響く歌声に、微かに流れる波の音色。遠くで揺らめき、さざめいているのは海……。

 目が覚めると、私は知らない場所にいた。さっきまで私、何していたんだっけ……? 思い出せないや……。

「××、ど─し─の? さっきからやけにぼーっとしているけど」

 一瞬だけ聴覚が乱れ、知らない誰かの声が聞こえた気がした。

「だれ……?」

 上手くまわらない舌を動かして、何とか声を震わせる。

「誰って……ひどいなぁ。ほら、この姿を見ても思い出せない?」

 その瞬間、頭に強い痛みが走った。それと同時に、何か見たことのない景色……そして、どこか懐かしい光景が思い浮かんだ。

 一人の少女が幸せそうに微笑む様子、棺を前にして泣きじゃくっている様子、成長した少女が机に向かって憂いを帯びた表情を浮かべている様子……。

 私は、この光景を見たことがあった……否、体験したことがあったような不思議な感覚に襲われた。

 それと同時に自分のなかで、蘇ってくる不思議な感覚……。

 そして、この目の前の少年は……

「思い出した、あなたはたしか……magic countryの……」

「そう、magic countryの最後の王様さ」

 そうだ、よくよく見ればカイトに姿がにている……。

「今、君が寝たタイミングで一回カイトの体から離れて君の夢に入ってみたんだ。どうしても、伝えたいことがあってね……」

 ゆめ……夢、だからこんなに意識があやふやで、しかもあり得ないはずのことが起こっているのか……。

「夢? それに、どうしても伝えたいこと?」

「そう、君に与えられた使命を遂行するために先人たちからのちょっとした手助け、さ」

 そういって朗らかに笑う少年。私はなにも言うことができずに、ただただ話を聞くことしかできなかった。

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