人の命はとても儚いものである。神様が決めた天命というものに従って、決められた期間を生きて、そして死んでいく。
だからこそ、人の命はとても綺麗だ。短いからこそ、桜のように美しい……。
けど、これから私の命に終わりというものはなくなる。世界のどこにあるものも、形のあるものは必ず滅びる。形のないものもいつしか忘れられ、朽ちていく。そんなもの。
しかし私は、私だけはその常識から外れることになる。怖いと言えば怖い。だって、大好きなみんなにいつか会えなくなってしまうのだから……。
けど、一番怖いのはカイトだ。私ばっかり怖がっていたら、彼に申し訳がたたない……。
カイトは、生まれたときからずっと一緒にいた。たくさん遊んだ、喧嘩もたくさんした、それでも最後は……仲直りをして、もっと仲が良くなった。
私は、カイトが大好きだ。きっと、ずっと、この先も……。大切な親友……ずっと一緒にいたかった。
私は死ねなくなる、カイトは死んでしまう。この世界のもっと先にあるであろう、神様の身許で会うことすら許されない。
けど、それが決められていた私の運命。それに抗ったら……世界にすむすべての人間が、不幸になってしまうのだ。
……せめて、最後は笑顔で。笑って、そして終わるんだ。私が普通の人間として過ごせる最期の時間と、カイトと共にいられる時間を……。
目を強引に擦り、曇った視界を綺麗にする。いつもの、青色の髪の毛が今は近い。少しだけ、嗚咽も聞こえてくる。私は、そんな彼をぎゅっと抱き締める。大丈夫だよ。言葉を紡ぐことはできないけれど、心の中で良いながら。
「それじゃあ、最後に言葉を残してくれ。そうしたら、儀式を始めるよ」
私は、泣かない。大丈夫、カイトと一緒にいられる、最後の時間は……さいっこうの笑顔にしないとね!!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。