「あれ……エイカ起きてたの?」
カイトの声がかかったのは、ちょうどイフリートさんを召喚するための魔方陣が書き終わったときのことだった。
「なにやってんの……?」
寝ぼけながら紙を覗き込んでくるカイト。
「あー……精霊さんの召喚か……」
私はコクりとうなずいた。
「ってあれ? なんで喋らないの?」
そういえば、作業をしているときってあまり喋らないよね。ということで、カイトに挨拶をするために声を出そうとした……が。
「……?」
声が、出ないのだ。
「エイカ……?」
大丈夫だよ、と声を出そうとしてもそれが声になることはない……。どうしてなのだろうか? 風邪でも引いた……? いや、それはない。
「ぁ……?」
かろうじて絞り出した声は、もはや音とは言えないほどに酷い。
「ちょ……大丈夫!? ……とりあえず、薬とってくるからまっていて……」
カイトは行ってしまった。そういえば、声を出さないでも精霊さんの召喚ってできるのかな? 心の中で呪歌を歌ってみればできる? とかないかな?
ちょっとやってみよう……
(古の精霊イフリートよ!
約束の地で結びし千年の約束を
超えて今我に力を貸したまえ
fire of Summoning‼)
すると火が目の前に現れて、徐々に形作られていく炎の魔方陣……本当に出来てしまうとは思っていなかったからちょっとだけ焦っている私なのであった……。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。