翌日、私はまだシルフさんとエドナが寝ている時間に宿を出た。五日分の代金は払っているし万が一のためのシルフさんに宿代は渡してある。これで大丈夫なはずだ。
「ねえ、カイト。これから私達危ないところへ行って帰ってこれないかもしれないけど後悔はない?」
私は純粋な気持ちでカイトに尋ねた。すると、カイトは私に微笑みかけて言う。
「勿論、僕はエドナを救えるなら後悔なんてしない。もしも自分が死んでしまってもね。というかもともと倒すつもりだっただろ?ちょっと状況が変わっただけだ。」
「そっか…」
正直、私は怖かった。昨日まであんなに張り切っていたのに出発直前になってここまで怖くなるなんて。あんなに自信を持っていた自分が本当に存在したのか、と思うほど私の心は弱くなっていた。
「大丈夫だよ、エイカ。そんなに怯えなくてもいい。僕だってちゃんとエイカの事を守るし、エイカだって強い。絶対に生きて帰ってきてエドナの呪いをとけるさ。」
この,カイトの言葉を聞いて私の心は軽くなった。悩んでいた自分がどんどん小さくなって消えていく。
「そうだよね…カイト。私がこんな弱気じゃあ駄目だ!やっぱりいつもの私じゃないときっと倒せるものも倒せないよね!」
いつも通りの笑顔を浮かべて、私はカイトの言葉を伝えた。すると、カイトもいつも通りの笑顔で言った。
「そうだよ、エイカ。だから弱気になんてならないで。僕と、エイカとエドナの三人でもう一度冒険をするために僕らは戦うんだから。」
「うん!!」
もしも、たった一人でこの依頼を受けていたらきっと私はこんなことを思えなかっただろう。だけど、私は一人じゃない。私の隣にはカイトがいる。カイトと一緒ならきっとどんな難題だって乗り越えられるはずだ。
もう一度、エドナとカイトと三人で冒険するために私は戦おう。弱気な心じゃなくって、強い心で。
「それじゃあカイト、行こうか!」
「ああ、行こう」
こうして、私はred wolfを倒す初陣へと向かうのであった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。