「ねぇカイト、この近くに小さな街があるみたいだけどいってみない?」
日がちょうど真上に上っている時間に、私はカイトにそう訪ねた。なんかこの近くに、村があるみたい。祭壇にも結構近いから、何か教えてくれるかもしれないし……。
「そうだね……明日には確実につくだろうし、今日はそこに泊まる? 流石に宿くらいはあるでしょ」
「何て名前の村だ?」
「えーっと……カーリア村? って書いてあるね」
ちょうどこの道を進んでいけばつきそうだ。カイトと要られる最後を精一杯楽しむために、このまえクエストをクリアして稼いだお金を使って軽く宴でも開きたいな~、なんて。
ずっと一緒にいたカイトだ。こんな結末でもせめて、せめて最後くらいは、楽しい記憶で終わらせたい。楽しい記憶で終わらせて、誰もいなくなったあとの世界で少しでも幸せな記憶に浸りたい。
「まあ、いいんじゃない? 時間にまだ余裕はあるんだし……」
「そうだね‼ それじゃあ早くいこうよ‼」
「あ、まて‼」
私は、近くにいたエイカを抱き上げて走り出す。当然、足の遅いカイトは私についてくることは叶わずに後方で必死に走っているのが見えた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!