一週間、という時間は長いように見えて短いものである。いつも通りにカイトやエドナと雑談をして、バカみたいに騒いで、たまに外に買い物に行って……泊まっている宿や場所は違えど、私たちに普通に巡ってきた日常を繰り返していたら、いつの間にかにもう……一週間がたってしまったのだった。
今は、七日目の夜。もう、明日にはここにいない……ここからまた遠い場所にあるという祭壇へと行かなければならないのだ。そして、カイトは命を落とし……私は不老不死となり、レイシアと対決しなければならない。そして、レイシアの命をこの手で終わらせて、この世界に平和をもたらすのだ。
「エイカ、エドナ、もう一緒にこうしてられるのもあとちょっとだって考えると感慨深いものがあるよね……本当だったら、もっと一緒にいたかったのに、僕らがmusic countryとmagic countryっていう対極の血筋に生まれて、世界を救うなんていう大きな使命を持ってしまったためだけから……」
「……そうだね」
「もしも私が、お前らと会わなければ……こんなことにはなっていなかったのだろうか……私があの道で目を覚まさなければ……きっと、お前らがこんなことを知らずに幸せに生きていけたかもなのに……」
そんなことはない!! と反論しようとしたら、私よりも先にカイトが口を開いて言った。
「エドナ、そんなことはないよ。あの予言が存在したってことは、僕らのどちらかが死んでレイシアと対峙することはもう決まっていたんだ。エドナに会わなくたって、きっと同じような時間に僕らはこの事実を知っていただろう」
またもや、沈黙が続く。一秒、二秒、三秒……と、続く。しかし、それを破ったのは私であった。
「ねぇ二人とも、このまま逃げちゃおうよ……レイシアが世界を滅ぼすその日まで……三人で、どっか遠いところに行っていままで通り過ごそうよ……」
「それダメだ……本当は僕だってそうしたいけれど、そんなことしたら……この世界に芽吹いたたくさんの命が、それまで紡いできた文明や物語が全部なくなってしまうんだ」
「……そうだよね。ごめんね、なんか変なことをいってしまって」
「大丈夫だ、とりあえず明日は早いからもう寝よう……。ちゃんと休まないと疲れて、そもそも祭壇にたどり着かない可能性すらあるからな」
「そうだね、おやすみ……」
『おやすみなさい』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!