んー…ここ思いっきり見せ場作りたいな。
アクロもいいんだけどたまにはそれ以外で…。
ガチャッ
『 あれ、ひーくん1人? 』
岩「 え、うん。だって今日練習ないよ 」
『 あーそっか!…あれ、じゃあなんでひーくん? 』
岩「 振り考えててさー 」
『 え!またフライングで見たいなぁ… 』
岩「 仕方ないな笑 姉貴にだけだからな笑 」
『 やったねっ! ん、ちょっと電話してくる! 』
岩「 はーい 」
俺らのグループの兄組には1人女の子がいる。
1つ歳上で2年先輩。
だけどその差がないように接してくれる。
本当は多分練習ないのしってて、
自主練できたんだと思う。
俺がこの事務所に入った時から
ずっと努力を重ねてるほんとにすごい努力家。
『 ただいまーっ 』
岩「 おかえり 」
『 とりあえず通しで見せてもらっていい? 』
岩「 わかった。途中までだけどごめんな 」
『 え、かっこよくない?今までで1番だわ 』
岩「 それいつも言ってない?笑 」
『 だっていつも思うんだもん笑
私ほんとひーくんの振り大好きだなーって 』
岩「 ありがと笑 」
『 ねね、ここってこう?それともこっち? 』
岩「 それはこうこうこう 」
『 あーそっかそう流れになってるのね 』
岩「 今回あねきなの苦手なステップ
入ってるけど許して笑 」
『 えー!あれさっくん得意だよね?!
やだああああ!練習しなきゃ! 』
岩「 ほんと負けず嫌いなのな笑 」
『 当たり前でしょ、ファンじゃない人なんか
特に私のそういう部分しか見ないんだから
そこでちゃんと魅せないと 』
ほんと誰よりもかっこいい。
今まできっと1人でこうやって戦ってきたんだろう。
そういうところを見ていたら自然とふりが出てくる。
岩「 ね、この曲のここに見せ場作りたいんだけど
あねきなこれやれる? 」
『 やってみる、 』
岩「 …どう、入れれそう? 」
『 入れるよ、絶対に入れる。
ひーくんが考えてくれたんだもん 』
岩「 そう言ってくれると思ってた笑 」
俺の憧れで多分手の届かない人。
俺の考える振り付けは俺の名前しか出ない。
けど多分、いつもこの人と作ってる。
いつか公に2人で作ったって言える作品が
できたらいいな。
今はとりあえずそう思いながら彼女の
頑張る横顔を見る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。