あれから蘭先輩と話して、蘭先輩は利き手の骨折と車椅子での生活を強いられたようだ。
少しすれば退院できるみたいだけど、綺麗な顔のらん先輩の頬に傷がすこし見えた。
なんとも言い表せない気持ちになって喉の奥がきゅうと唸った。
蘭先輩は私のそんな顔をみてフッと笑うと「そんな顔するな」と言って頭を優しく撫でてくれた。
まるで壊れ物を扱うように触れたその手は誰よりも暖かく感じた。
それと、蘭先輩はなにかと私に 謝る ようになった。
少し私が音を立ててぶつかったとしたらその時はすごく心配して顔を真っ青にするし、なんだか過保護にされるのは新鮮で……笑
先輩も人のことが言えたもんじゃないのに、そんな先輩を見ているとなんだか嬉しくて……どこか懐かしくて……笑
幸せだった。
蘭先輩は時折、私の顔を切なそうに眺めることがあった。
その度に私は笑いかける。
すると、ハッとたようにまた笑顔をつくる先輩。
先輩も私も日に日に良くなって言ったけれど、たまに病室を抜けてきてらん先輩は私によく「病院食はどこも薄味だよな〜、蘭ちゃんそんなんじゃ満足出来ねぇっての」なんて耳打ちしてきたっけ。
不謹慎なことを言ってしまえば、そんな日々はなんだか 悪くない と思った。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!