(ピンポーン)
パソコンの画面がタイムアウトして、部屋が暗くなってきた頃、家のチャイムが鳴った。
こんな時間に誰だ?
申し訳ないけどこんな泣き腫らした顔見せる訳にも
いかなくて、居留守させてもらう事にした。
(ピンポーン…ピンポーン)
ちょっとしつこいなぁ。
でも3回鳴らして出ないんだから、さすがにいないと
思うよね?
(ピンポンピンポンピンポン)
あまりのしつこさに少し苛立ちを覚えてしまい
もういいやと、玄関に出るとそこには大好きな人が。
僕の名前を呼んで抱きしめてきた。
走ってきたのか、少し肩が上下に動いてて
心臓の鼓動も少し早い。
あぁ、大好きなてるとくんの匂いだ。
そう思うとせっかく引っ込んだ涙がボロボロとまた
溢れだしてきた。
…ダメだって。てるとくんにこんな姿見せられない。
俯いて涙が見えないようにして謝ると
被せるようにてるとくんが謝ってきた。
なんで?謝るのは僕の方だよね?
嫌だ、聞きたくない。
どうせ別れ話でしょ?僕よりばぁうくんが好きだって
言うんでしょ?
でも、てるとくんの幸せが僕の幸せだから。
ここで受け入れて、最後くらい潔くてカッコイイ
僕でいよう。
僕らはリビングにあるソファを背もたれにして
床に隣り合わせに座った。
なんでてるとくんが謝るの?
他の人のこと好きになってごめんなさいってこと?
でも空気感で読み取ってくれるくらいてるとくんは
僕のこと分かってるんだ。
そう思って少し嬉しくなってしまう自分が憎い。
終わらせるって決めたのに。
これじゃ、、
てるとくんは力強く僕のことを抱きしめてくれた。
じゃあ…
ああもう、なんでこの人はそういうことを
サラッと言えちゃうのかな。
さっきまでの不安が嘘のように心が落ち着いた。
てるとくんの僕を見る目が、僕に向ける声が
全部全部大好きなんだ。
なんで信じれなかったのかな。
安心したからまた涙が止まらない。
僕こんなに泣き虫だっけ。
でもてるとくんの前ならいっかとも思ってしまう
自分がいる。
_____
END
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。