夏「…じゃあ……じゃあ君は…どうしてここに来たんだ…」
『………私は……』
口を開いた瞬間、携帯の着信音が鳴る。
彼女のものだ。
静かな部屋でけたたましく鳴り響く着信音に彼女は溜息を着くと画面を開いた。
………相手は悟だった。
夏「……出なよ、きっと君を心配している」
『…………』
彼女は私の言葉を聞くと通話ボタンを押した。
電話越しでも悟がかなり怒鳴っているのが分かった。
『…………五条くん、ごめんね…
………さようなら』
夏「!!」
彼女は一方的に電話を切ると、いつの間にか月の光が差し込んでいた大きな窓をガラリと開く。
──そして次の瞬間、持っていた携帯電話を勢い良く投げ放った。
窓の外には大きな川がある。恐らくそこへ落ちただろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。