「自分を愛せなかった事が悔しい。」
死ぬ時が来た。驚くくらい恐怖感ゼロだ。
サイフとスマホを持って家を出てきた。
ある一室を、全て閉じ切り一酸化炭素中毒で死のうと思う。眠る様に逝きたいと思った。
スマホはGPSがついているので、どれくらいかすれば俺を捜索しに来るだろう。
弟は、泣くだろうか。最後にしてやった5分の話は続きがある話だ。意地悪いなと思う。あえて続く話をして、忘れさせないようにしたのだ。
母には迷惑をかける。弟に執着するかもしれない。ただ母は強い。ちゃんと弟を育て上げて、俺に向かって「ざまあみろ、こんなにも幸せなんだよ。」と言ってくるかもしれないな。
準備はできた。
「遺言とか、いいの。」
雪は小さな声で尋ねた。
「何もない。後悔なら、一つある。」
「そう。」
「じゃあ、おやすみ。雪。ありがとう。」
「ーええ、こちらこそ。ありがとう。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!