「楽になりたい。」
20歳になる年だ。何か弟が質問していた。それを答えるとき、素敵な笑顔を見せていた。これももう見れなくなるのかと思うと、名残惜しい。ただ、一つ気になることがあった。
兄は子供を産ませていない。にも関わらず決行しようとしている。私の力を使うには、条件を満たさなければならないのに。
不思議に思っていると、二人になったときに説明してくれた。
「俺が自殺すれば、お前の行き場はなくなる。長男が産まれていないので、必然的に消えるだろう。」と、淡々と言った。
私は、誰も殺さず消えていけるのかと尋ねた。
兄は笑って「楽だろ。」と言った。
自殺。そんな方法は思いつかなかった。私を願わず死ぬなんて、そんなこと。
楽になりたい。そう思っていたから。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。