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第6話

#5
「あーあ、やっぱり腫れてる。」

洗面所の鏡を見ながら、真っ赤に腫れたまぶたをつつく。
昨日帰ってきた後、部屋で一晩中泣いていた。
その代償がこれだ。

「…今日はコンタクトじゃなくて、メガネにしとこ。」

メガネをかけて、前髪をできる限りおろして、学校に向かった。
授業は全然集中できなくて、気がついた時には昼放課だった。

「…凛?」

京香が弁当を持って、私の目の前で手を振る。
私は京香の方に顔を向けて、ぎこちなく笑った。

「大丈夫。ただ、今日は2人で食べたい。」

「…いいよ。階段で食べようか。」

京香は優しく微笑んだ。
立ち上がって黎を横目に見ると、イヤホンをしながらサンドウィッチを食べていた。

普段はイヤホンなんかしないのに。
…そんなに私と話したくないのだろうか。

そう思うと、じわじわと視界が歪んできた。
気づかれないように慌てて手で隠しながら、京香とともに教室を出ていった。

踊り場の窓から暖かい日差しが差し込む階段に座って、私と京香は弁当を広げた。

「なんかあったの?その眼、泣いたでしょ。」

弁当を食べようと箸を持っていた手が止まる。
そして、涙が溢れてきた。
京香はギョッとして、慌ててハンカチを取り出し、俯いていた私の顔を上げて、涙をぬぐいはじめた。

「うっ…京香ぁ…。」

「どうしたの!」

「黎が…話してくれんかったぁ…。」

「はぁ!?黎のやつ、話さなかったの!?」

「うん…お前は知らなくていいって。」

「それは、話さない黎が悪い。」

京香は少し黙った後、私と目を合わせて話しはじめた。

「あのね、凛。黎、卒業後すぐにアメリカ行くらしいの。」

「…え?」

驚きのあまり、涙が止まる。

「語学の勉強をするために、アメリカの大学に通うつもりなんだって。」

「そっか…。」

「浩介は夏休みくらいには聞いてたらしいけど、私はセンター試験の後くらいに教えてもらったばかりで…凛に話したのか聞いたら、自分で話すから、黙っててほしいって言われて。」

「うん。」

「…凛、告白しなくていいの?卒業後は本当に離れ離れになるんだよ?」

京香は私の黎への想いを知っている。
だからこそ、誰よりも心配してくれている。

「…いいの。言って引き止めるわけにもいかないし。しかも…たぶん、私、嫌われてるから。」

「そんなことないよ!」

京香が私の両肩を掴む。

「黎、いつも凛のこと気にかけてたもの!それに、私のことは苗字で呼ぶのに、凛のことは名前で呼ぶんだよ?嫌われてるわけないって!」

「でもっ!!」

止まっていた涙が、また溢れてくる。

「無理だよ!今のすれ違った関係のままで伝えられないし、振られて、今の関係が壊れるのが怖いよ…。」

私のぽろぽろとこぼれ落ちる涙を見て、京香も涙を流していた。

「凛はそれで…後悔しないの?」

「…後悔ばかりに決まってるじゃんか。」

学校の昼放課であることも忘れて、私と京香は抱き合って泣いた。
(…こんなところで泣いてんなよ。丸聞こえだっての。)

凛と京香が教室を出ていくとき、俺は素知らぬ顔をしていたが、どうにも凛のことが気になって後をつけてきた。

「はぁ…。どうしたもんか…。」

ため息をつきながら、俺は教室に戻った。


「おお、どうだった?」

教室に戻ると、浩介が焼きそばパンを頬張りながら、そう聞いてきた。

「号泣。」

「あーあ。お前がちゃんと伝えないから。」

「うっせえな。」

(目の前であんな風に泣かれたら、どうにもできなくなるから、言えなかったんだよ。)

心の中でぼやいても、誰も気づくやつなんかいない。
余計なことを話して傷つけるよりは、黙っていた方がまし。
そう思った俺は、絶対に凛に話すつもりはない。
アメリカ行きのことも…俺のこの想いも。
昼放課に大泣きした私と京香は、さすがにひどい泣き顔のまま午後の授業に参加する勇気はなくて、早退をした。

「本当にいいの?」

「何が?」

「告白しなくて。」

京香が心配そうな表情をする。
私は笑顔を取り繕った。

「いいの。」

もう、いいの。
黎と友達のままでいれば、誰も傷つかなくてすむ。

だから、この想いは、私の中に秘めたままにしておくんだ。