私は雅 和歌。今日からこの学園に通う中等部1年だ。
今、私たちの目の前に広がるのは本当に学園なのかと思ってしまうほど大きく豪華な作りの校舎。
安定には噴水やベンチなどもあり、まるで御伽話の世界に迷い込んだようだ。
こんな感じで思いっきり列からは外れて校舎を駆け回ろうとするお兄ちゃんを止めるのも私の役割。
お兄ちゃんを列に戻すのに苦戦していると、背の高い色白な男性が声を掛けてくれた。
どこか優しい雰囲気を醸し出していて、自然と警戒心は湧かなかった。
青色のネクタイ……もしかして高等部の先輩かな?
珍しく自分から頭を下げて謝罪するお兄ちゃんに目を見開く。
この人、ちゃんと礼儀もあったんだな。
危なかった……なんで分かったんだろ?
確かこの学園の制服は、中等部が小洒落たセーラー服にネイビーの学ラン。
高等部の制服がYシャツやリボン、ネクタイに様々な色のカーディガンやブレザー、ベストだった気がする。
確かに高等部の先輩だとは思っていたけど、まさか生徒会長さんだったなんて……。
ああ、お兄ちゃんのかっけぇスイッチが入ってしまった……。
かっけぇスイッチとは、お兄ちゃんがとても強い憧れを抱いているものに遭遇したり、少年心的にかっけぇと思ったとき、かっけぇかっけぇを連呼して語彙力が低下してしまうことである。
というのはおいといて。
またお兄ちゃんの襟を掴んで引きずり強制連行をする。
そう言いながら手を振る先輩に会釈をして、私たちもエントランスホールへと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。