朝からとある部屋の前でため息をつく少女は勢いよく目の前のドアを開ける。
部屋の中を覗くと、中はポテチやゲームにスマホ、ゴミなどで言いようのないほど散らかっていた。
そしてベッドの上には、無地のTシャツにタンクトップといった軽めの部屋着を着崩している少年が大の字で思いっきり寝ている。
起きない。
これまた起きない。
これでも起きない。
またもやため息をつく。
今度はすーっとたっぷりと息を吸う。
圭太の耳元に口をそっと近づける。
次の瞬間。
今までにないくらいの大声を少年の耳元で発する。
少年は驚いている様子。
そう、この2人は二卵性双生児の双子である。
朝からボサボサの髪をかいているのは双子の兄の雅 圭太。
頭より体が先に動く活発的な性格。
そのせいで周りを振り回すことも多々ある。
それに対し、すでに新品の制服に着替えて髪もきっちりと一つに結んであるのは妹の雅 和歌。
圭太とは対照的な正義感が強いしっかり者。
まさにいつも圭太に振り回される被害者の1人。
今日は彼らがこれから入学する『雲雀学園』の入学式の日。
雲雀学園。
それは、国内でもトップクラスの学力を誇る私立学園。
幼稚舎から大学院まで校舎があり、超有名な私立校なのである。
つまり、それだけの大勢の人たちが集まるということである。
そうなれば、様々な人が集まってくるのも無理はない。
例えば、変人など。
中には問題ばかり起こす厄介児もいるだろう。
流石に準備が早い。圭太はすぐにリビングへと降りて行った。
朝から大声を出して人を起こしたりなどしたら、確かに疲れるだろう。
和歌は自分の部屋に戻り、とある本を手に取って読み始めた。
下の階から聞こえる母、小春の声。
和歌は首をすくめて「さあ?」というような動作を示した。
小春はこの街の市役所で勤めている公務員だ。
丁度いつもなら車を出して職場に向かっている時間であろう。
圭太に呼ばれ、慌てて袖を捲り腕時計を確認する和歌。
その針はちょうど8時を指していた。
母親の声を背に、雅兄妹は玄関を勢いよく飛び出した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。