第2話

プロローグ
60
2022/11/11 07:50
雅 和歌
雅 和歌
はあ……
朝からとある部屋の前でため息をつく少女は勢いよく目の前のドアを開ける。
部屋の中を覗くと、中はポテチやゲームにスマホ、ゴミなどで言いようのないほど散らかっていた。
そしてベッドの上には、無地のTシャツにタンクトップといった軽めの部屋着を着崩している少年が大の字で思いっきり寝ている。
雅 和歌
雅 和歌
ほら、起きて!
雅 圭太
雅 圭太
……
起きない。
雅 和歌
雅 和歌
お、き、て!
雅 圭太
雅 圭太
…………
これまた起きない。
雅 和歌
雅 和歌
お、き、な、さ、いっ!!!
雅 圭太
雅 圭太
………………
これでも起きない。
またもやため息をつく。
今度はすーっとたっぷりと息を吸う。
圭太の耳元に口をそっと近づける。
次の瞬間。
雅 和歌
雅 和歌
起きなさぁぁぁぁぁい!!!!!!
今までにないくらいの大声を少年の耳元で発する。
雅 圭太
雅 圭太
うえっ!?
少年は驚いている様子。
雅 和歌
雅 和歌
はあ、やっと起きた。
雅 圭太
雅 圭太
朝から大声出すなよ!
雅 和歌
雅 和歌
お兄ちゃんが何回起こしても全っ然起きないからでしょ!?
そう、この2人は二卵性双生児の双子である。
朝からボサボサの髪をかいているのは双子の兄の雅 圭太。
頭より体が先に動く活発的な性格。
そのせいで周りを振り回すことも多々ある。
それに対し、すでに新品の制服に着替えて髪もきっちりと一つに結んであるのは妹の雅 和歌。
圭太とは対照的な正義感が強いしっかり者。
まさにいつも圭太に振り回される被害者の1人。
雅 和歌
雅 和歌
ほら、さっさと着替えて朝食も食べてきたら?
雅 圭太
雅 圭太
は〜い
今日は彼らがこれから入学する『雲雀学園』の入学式の日。
雲雀学園。
それは、国内でもトップクラスの学力を誇る私立学園。
幼稚舎から大学院まで校舎があり、超有名な私立校なのである。
つまり、それだけの大勢の人たちが集まるということである。
そうなれば、様々な人が集まってくるのも無理はない。
例えば、変人など。
中には問題ばかり起こす厄介児もいるだろう。
雅 和歌
雅 和歌
(不安しかないんだけど……)
雅 圭太
雅 圭太
和歌、着替え終わったよ?
雅 和歌
雅 和歌
え、もう?じゃあ、テーブルの上にあるサンドウィッチを食べてて
雅 圭太
雅 圭太
はーい
流石に準備が早い。圭太はすぐにリビングへと降りて行った。
雅 和歌
雅 和歌
ふう、朝から疲れた……
朝から大声を出して人を起こしたりなどしたら、確かに疲れるだろう。
和歌は自分の部屋に戻り、とある本を手に取って読み始めた。
雅 小春
雅 小春
和歌、圭太は起きた?
下の階から聞こえる母、小春の声。
雅 和歌
雅 和歌
うん、今日も大声使ってやっと起きたよ。
雅 小春
雅 小春
あら、そうなのね……まったく。圭太の寝坊癖は一体いつになったら治るのかしら?
和歌は首をすくめて「さあ?」というような動作を示した。
雅 和歌
雅 和歌
一生治んないんじゃない?
雅 小春
雅 小春
確かにね。今まで圭太が和歌より早く起きたことなんて一度もないし……
雅 和歌
雅 和歌
そういえば、お母さんはもう仕事に行かなくていいの?
小春はこの街の市役所で勤めている公務員だ。
丁度いつもなら車を出して職場に向かっている時間であろう。
雅 小春
雅 小春
今日は2人の入学式だから、仕事は有給で休ませてもらったの。
雅 和歌
雅 和歌
そっか、ありがと!
雅 小春
雅 小春
いいのよ。それに、今まで仕事が忙しくて、中々授業参観みたいなイベントも、来てあげられてなかったでしょ?
雅 小春
雅 小春
流石に今回こそは、て思ったのよ。
雅 和歌
雅 和歌
そっか……
雅 圭太
雅 圭太
和歌ー!そろそろいく時間じゃない?
圭太に呼ばれ、慌てて袖を捲り腕時計を確認する和歌。
その針はちょうど8時を指していた。
雅 和歌
雅 和歌
あ、本当だ!お母さん、いってきます!
雅 小春
雅 小春
ふふっ、今日は圭太の方が早かったみたいね。いってらっしゃい!
母親の声を背に、雅兄妹は玄関を勢いよく飛び出した。

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