でも確かに流石の私での今回の校長先生の話の長さには応えた。
祝福の言葉で30分。
さらに雑談で1時間。
計一時間半も校長先生の話だけで使ってしまっていた。
異次元すぎる……。
そう言いながらお兄ちゃんが指を刺した場所、自分のクラスを確認しようとする人達で混雑していた。
私の様子から不安や緊張なんて感じていないと思っているかもしれないが、それは大間違い。
私だって人間だ、お兄ちゃんしか知り合いが居ないようなどんな輩か居るかも分からないところにいるだけで不安を感じている。
更にお兄ちゃんと別のクラスに分かれてしまっていたら、もう終わりだ。
私は昔から人見知りで、その上弱虫。
いつも活発で友好的なお兄ちゃんに助けてもらっていた。
そのお陰で小学校では少ないながらにも、大切に出来るような友達は何人かいた。
でも此処『雲雀学園』には友達は居ない。
本当はお兄ちゃんに頼らなくても、一人で友達くらい作らないといけない年なんだ。
分かっている、分かっているけど……
数分待っても混雑していたので一人で確認しに行ったお兄ちゃんに恐る恐る問いかける。
私達の苗字は同じなため、自分の名前が確認出来たなら私の名前も確認出来たはず。
お兄ちゃんは少し間を置いて、私に向かってにこっと微笑んできた。
あまりの嬉しさに、膝から崩れ落ちてしまう。
あたりを見渡すと、もう他の生徒たちは自教室に向かっていた。
私も急いで立ち上がり、先に行こうとするお兄ちゃんの足を追って1年B組へと向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。