キーンコーンカーンコーン。
昼を示すチャイムが鳴る。
今日は入学初日の為、お昼頃にはもう帰れるらしい。
流石に入学初日から午後まで授業があったらにもたないしなぁ。
今まで1人だけで帰ったことは無かった。
それなのに和歌だけ先に帰って俺が一人だけ帰ったら絶対寂しい!!
という冗談を交わしつつも楽しげに笑う和歌。
彼女の笑顔はとても綺麗で上品で、そして見惚れてしまうくらい美しい。
言葉では言い表せない程。
何か腑に落ちない部分があるそうだが、納得してくれたみたいで良かった……。
俺を見て呆れた様に溜息を吐いた和歌を見て、俺は数日前のことを思い出した。
そう言いながら俺の顔を上目遣いで必死に懇願するような可愛い顔で見つめて来た和歌。
和歌は無意識なんだろうと思うが、余りにも可愛すぎる!
急に問いかけられ、返事に困る。
そう言えば俺、何でこの学園受験しようと思ったんだっけ。
今思い返せば、俺がこの学園に入学したのはどんな輩が居るか分からない学園に和歌を1人で置いておかないからだった。
折角入れたこの学園。
何か自分のやりたい事の一つや二つは見つけておきたい。
でも、俺のやりたい事とは……。
そうこう考えているうちに、俺は今朝会った高等部の伊月先輩のことを思い出した。
俺たちが列からはみ出していた時も真っ先に心配してくれた。
新入生の落ち着きが中々治らなかった時も、先輩が一声出せばみんなが鎮まっていた。
入学式で校長先生の長話に耐えきれなくて倒れてしまった子がいた時も、一番最初に気付いて抱っこをして保健室まで颯爽と運んでいた。
みんなを指揮して、且つ生徒の心配を誰よりもし、みんなから愛され尊敬される生徒会長。
そうだ、俺がこの学園でやりたい事……目指したいものは!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。