よく晴れた空を
2羽の鳥が並んで飛んでいる
風が吹いて
教室のカーテンがふわりと揺れた
春の香りがする
風に乗って
桜の花びらが窓ガラスについた
桜の見頃なんて
とっくに
過ぎてしまったというのに
私は
どこかの誰かさんのようで
その花びらが
とても愛おしく感じた
私は
花びらの先に
目を落とした
まだ
授業中だと言うのに
音を立てて
立ち上がって
教室を飛び出した
息が切れることなんて
どうだっていい
他人の目なんて
どうだっていい
足が
軽い
今なら
何段の階段だって
飛び越えられる
中庭
そこは
はじまりの場所
木々が揺れて
キミが振り向く
ずっと聞きたかった声
どうしてそんな
優しい顔で
微笑むんだ
そう言って私は
黒須くんの胸に飛び込んだ
言いたかった言葉は一緒
瞬く間に
穴の開いた世界が
埋まっていく
すぐ赤くなるとこも
変わってない
倉持くんがどこからか現れて
顔で
周りを見ろと
訴ったえかけてきた
学校中のみんなに見られていた
私が慌てて
黒須くんから
離れようとしたとき
そう言って
ぎゅっと
私を離さなかった
ここから
はじまる
私と
黒須くん
そして、
みんなとの
自由な
青春が
***
僕が
キミへの
愛を語るには
文字数が
たりない
なんてな_________________
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!