第11話

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2021/02/28 06:50
俺はホセ・ブランコ氏のプレイを見てセッターになろうと思った。それは俺が小学生の頃の話で。
高校の時、ブランコ氏と話す機会があって、俺はこの人にバレーを学びたいと思い、海外に挑戦しようと、これからもバレーを続けると決意した。その時一つ大切なものを自らの手で捨ててしまった。




それから単身、知らない土地に慣れることだけでも精一杯だった。けど強くなりたい。それだけを持って来たはずなのに、あの時失くしたものを捨てられずにいた。
大切なものがこの先も手に入れられないならせめて、君が幸せなら俺はそれで良いと言い聞かせていた。



7年、ずっと言い聞かせてきた。
でも、大切なものを自ら捨てた俺にも、運命が巡ってきた。
半年前、あの頃からずっと大切な、君が俺を追いかけて来てくれた。
もう絶対に、離さないと決めた。

















「あなた、俺が言いたいことは一つだけだよ。この先ずっと君を世界一幸せな花嫁ひとにすると誓うよ、だから俺と結婚して欲しい」





会場中が、割れんばかりの歓声と拍手、指笛、とにかく大盛り上がりの中俺は、あなたに身体を向けた。あなたは両手で顔を覆っていて、チームメイトに背中を撫でられていた。
俺が近づいてあなたと、名前を呼ぶと俺の身体に飛び込んできた。そのまま抱きしめれば、わんわんと泣き始めるあなた。より一層盛り上がる会場を無視して。

「徹くん、」
「なあに?」
「恥ずかしいよ、」
「ごめんって!」


涙を拭いて、俺を見上げるあなた(かわいい)は、俺のプロポーズの返事をするね、と言った。別に今無理しなくても良いよ、と言おうとした瞬間







「私の言いたいことも一つだけだよ。これからも徹くんの隣を歩いていくよ、おじいちゃんおばあちゃんになっても。」

なんて、可愛らしいプロポーズ返球され、今度は俺が両手で顔を覆ってしまった。





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