今日のCAサンフアンは“最強”、その言葉がぴったりだった。一人ひとりのプレイが光っている。
試合はストレートで勝ち、優勝した。そしてそんなチームのインタビューが始まろうとしていた時、通訳ブースに大会スタッフが来て私を呼んだ。
「あなたさんですよね、こちらに来てもらえませんか?」
「あ、でも私今から通訳の仕事がまだ、」
急かすようにして私は椅子から剥がされ、わけも分からずに付いて行った。
付いて行った少し先にはインタビューのステージが見える。CAサンフアンのキャプテンがインタビューの真っ最中で、私は大会スタッフを睨むようにして視線を送ると、ウインクされ少し苛立ってしまった。
キャプテンのインタビューが終わると、次は徹くんがキャプテンとハイタッチを交わして入れ替わり、ステージに上がった。
その時、徹くんと目が合い、徹くんはニコリと微笑むと、インタビュアーの質問に応えていった。
今日のチームはここ最近の中で特にベストコンディションだった。
チームみんながバレーボールを楽しんでいた、俺も楽しかった
など終始笑顔の徹くん。私も心のなかで優勝、おめでとう!と呟く。
インタビュアーが、
「ありがとうございました!改めてとCAサンフアン、優勝おめでとうございます!」
と声を張り上げた後、持っていたマイクをスタンドに立ててその場を後にした。私はどうしたらいいんだとキョロキョロ周りを見回すと、CAサンフアンの選手が私の後ろにぞくぞくと集まってきた。
振り返ると、私と曲がり角で交通事故にあった選手がいて、またもやウインクされる。みんなウインクが上手だな、とかどうでもいいことを考えていると、
「あーあー」
スピーカーから徹くんの声が聞こえて、ステージに視線を戻すと徹くんはまだそこに居て、マイクスタンドの高さを調節していた。
シーンと会場内が静まり返る。誰も居ないんじゃないかって位に。
徹くんの声がだけが響き渡った。
「緊張するなあ」
と間の抜けた声に観客席から笑い声。チームメイトも笑っている。
「えーと、まずは改めて、応援してくれてる全てのバレーボールファンに感謝を」
会場が拍手の音で溢れる。しばらくして静けさが戻ってくると徹くんは
「今日は手紙を、書いてきました。みんなにそれを聞いてほしくて時間を割いてもらいました」
と、言った。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。