床が下がり見えなくなると私はサクラに右目の眼球が無くなったことで中が腐らないようにするための治療をしてもらっていた。
隣のソファには呆れ返った弟の姿がある。
みんなを送り終わったナツキが戻って来て、結果を簡潔に報告してくれた。
久しぶりに聞いた夏希さんのタメ口が懐かしい。
そんなことを噛み締めながら私は次のための準備をすることにした。
私はレイを連れてみんながいる部屋から出る。
すると、部屋を出た瞬間レイが話しかけてきた。
レイの過去は私と廉だけが知っている。
サクラとミラは知らないしナツキも知らない。
綾梨ちゃんはナツキが死んだはずの実の姉だったことに驚いてたけど…
あの人は私のことに驚くかな〜…
私の部屋に入ると、そこには廉と比べ物にならないくらいのパソコンが置かれている。
さぁて、始めようか……
次はどんなChinonゲーム?
どうせなら、プレイヤーも面白くしないと…
私みたいなのを入れるのもあり?
ふふっ、考えるだけでニヤケちゃう。
人が死んで悲しい?
そんなのいつかは絶対になることでしょ?
一生生きていられる人間なんてこの世にいない。
別にスグ死ぬか寿命が延びるかの問題。
私に怒りを向けた綾梨ちゃんもいつか死ぬ。
このゲームを操った弟の廉もいつか死ぬ。
機械の夏希さんだっていつかは壊れて死ぬ。
みんな、いつかは死ぬんだよ。
そんなことを他人事のように言う私もね。
だったら、いつ死ぬか分からないこの時を。この一瞬を最高の物にしないともったいないよね?
Chinonゲームはただの遊戯。
でも、その遊戯が会ったからこそ出逢えたこともあるはずだ。
だから、面白くてたまらないんだよ。
生きるか死ぬかの極限で選択をして、大切な人と出逢って、命の大切さを知って、最期になってようやく重さを知って泣いて、時には笑って。
こんなのを止めるなんてつまらない。
そうなったら、私がやることはただ1つ。
それは ─────
─── 私の遊戯を誰にも止めさせなければいい。
ただ…それだけだよ?
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。