………可能なら嘘なんだと信じたい。
フォロワーの人が送ってくれた写真。
写真だけで名前がフルネームで分かってしまう。
写真には長い髪を上で留めて、首にヘッドフォンをかけ、隣に映る小さな女の子を抱き上げて満面の笑顔の10代前半程の女子。
10代前半?………いや、これは13歳だ。
見間違えるはずもない、この小さいのは私。
そして、この隣は ───
「名前は千川夏希さん、今は20歳です。」
─── 私の死んだはずの実の姉だ。
『まぁ、死んでるんですけどね!』
さっき唯奈さんに言ってた言葉。
本当にその通りだった…
答えようと顔を上げた時、私は息を呑む。
この部屋にいるのはナツキ。
そして、私と蘭さんと及川の3人。死ぬのは1人。
残ってるのは今まで1番長くいた蘭さんと及川。
2人を残して私だけが行っていいのかな…
蘭さんにハッキリと言われて、私は黙り込む。
そこに及川も「そうだよ」と乗った。
蘭さんと及川に背中をされ、ナツキの前へ。
ナツキさんはニコニコとして「答えは?」と私に笑いかけてきた。
ナツキが扉を開ける。
奥に進む直前で私は立ち止まり振り返る。
2人はただ手を振るだけ。
……進もう、でも最後になるかもだから…
私はそう言い残して扉の奥へと進んだのだった…。
歩いてついたのは明るめの部屋。
そこでは、わーわーとみんなが騒いでいた。
部屋のソファでどんちゃん騒ぎしている通過者達はまさかの机を囲んでババ抜きをしていた。その中には先に通過した真琴と忍ちゃんもいる。
真琴が鈴架ちゃんに負けてババなのが悔しいのか拗ねきっていた。
ナツキがそう言って、部屋に入ってくる。
そして、そのナツキの後ろからは1つの足音しか聞こえなかった…。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。