茨の壁が開き、花瓶が見えた。
私はマシンガン銃を捨てて、花瓶に手を伸ばす。
花瓶に手が触れる。
しかし、スグに再生した茨に手を引っこめる。
少し当たったせいで、花瓶が床に落ちた。
このままじゃ、落ちる…!!!
きっと茨の棘が腕に刺さり、血が腕を流れる。
きっと頬も掠って擦り傷が出る。
それでも、私は痛いの覚悟で茨の壁に飛び込み落下する花瓶をしっかりと掴んだ。
茨の壁が縮まり、私が棘の餌食になる寸前。
壁の動きはピタリと止まり、蔓は地面へと吸い込まれてなくなった。
立ち上がってサクラさんにこれを渡したいが、足が棘にぶつかり過ぎて痛くて立ち上がれない。
すると、私の目の前にサクラさんが立った。
その背後には見たことも無い植物が動いている。
サクラさんがしゃがみ、私の頭に手を伸ばす。
頭を握り潰されるか、思いっきり脳内に何かされると思った。
…しかし、私は死ぬことはなかった。
ゆっくりと目を開けると、サクラさんが私の頭を軽く撫でて、手から花瓶を取る。
サクラさんはふんわりと優しく微笑み、私の手を取るとその上に持っていた鍵を置いてくれた。
両手の指先を合わせてそう言うと、サクラさんはすっと立ち上がった。
みんなを襲っていた植物は全て土へと還り、綺麗なお花畑へと変わる。
そして、次の階へと続く扉の前に薔薇のアーチが現れた。
私は貰った鍵を使い、扉を開ける。
手を振るサクラさんを背中に階段を上る。
次の部屋へと出る扉まで辿り着く。
私は少し躊躇したがその扉を思いっきり開けた。
そこはいつしか見た最初の景色にそっくりな風景。
空中にはたくさんの会社の広告が映し出され、眩いネオンが煌めいている。
そんな中、私達を待ち構えるようにふわふわと浮いていたのはナツキだった。
ドンッと胸を張り、ナツキが笑う。
すると、何かを思い出したように手を叩いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。