第5話

38
2021/01/11 09:27

学校は、嫌いだ。

好奇の目で見てくる上級生も

迷惑そうな顔で見てくる教師も

あからさまに顔をしかめる友達も。

全てが私を拒否しているようで、私はいつも、俯いていた。

上を向いても、どうせ、空は雨だし。
七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
はぁ。憂鬱…

その時だった。

歩いている私の前を1台のスクールバスが通る。

そのバスの、空いた窓からつまらなそうに外を見ていた顔は、確かに奏多だった。

七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
嘘、でしょ…

慌てて学校名を見る。

そこに書いてあったのは、この近くでもトップレベルの進学校。

少なくとも私の通う学校より、5は偏差値が上だ。



一瞬、目が合った、ような気がした。

現に奏多が驚いた顔をしたので、勘違いではないのだろう。

私は、速攻で目を逸らし、また1人歩き始めるのだった。


ーーー

七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
やばい…バレたかな?

授業中、私は教師の話は耳に入らず、ずっと、奏多のことを考えていた。


「じゃあ、ここを…七瀬!」
七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
はい!

話、聞いてなかった〜
でも、この計算解けばいいんかな…
七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
~~です。

「正解、座っていいぞ。」
七瀬  晴歌
七瀬 晴歌
はい。
 焦ったぁ。
奏多のことは、もう考えるのをやめよ。

そう思い、私は目線を、馬鹿みたいに晴れた青空から、暗い緑色の黒板へ移し、授業に集中するのだった。


ーーー

星宮  奏多
星宮 奏多
やばい…バレたか?

朝。
スクールバスに乗っていても面白い事なんて何ひとつもなくて、外を見ていた時に見つけてしまった。

1人歩く、晴歌を。

一瞬目が合ったような気がした。

いや、あれは絶対目が合っていた。

その事ばかりを考えていたせいで、授業には全く集中出来なかった。

「じゃあ、ここを、星宮!」
星宮  奏多
星宮 奏多
は、はい!

予想していなかった教師の声で意識を授業に引き戻された僕は、黒板の式を見る。

これを解けばいいのか。

星宮  奏多
星宮 奏多
~~です。

「正解だ。難しかったが、よく解けたな。」
星宮  奏多
星宮 奏多
ありがとうございます。

そう言って席に着く。
これは、集中しなくちゃまずいな。

そう思い、今度こそ僕は授業に集中するのだった。

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