第12話

ファンです。
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2019/06/30 14:29
可愛いドレスを着て、


キラキラなステージで歌って踊って、


たくさんの人が拍手や歓声をあげる。





そんな華やかな世界に憧れた。









どうしても、そこに行きたくて、


ダンスを始めた。

可愛くなる努力をした。




そのおかげで、学校ではまあまあな有名人だった。








“ダンス部のダンス上手くて、可愛い子”

として。



「ファンです!!」

って言ってくれる後輩や、


「今日のダンス良かった」

ってメールしてくれる同級生。



文化祭も、ちょっとした地域のお祭りのステージも、必ず見に来てくれる子とか、、





嬉しくて。

あぁ、こういうことなんだ。って。



将来絶対、芸能界に入る!って。








…私の人生まだまだこれからだったのに。





突然の余命宣告。



もう踊れない。とか何事ですか。






夢なんだと本気で思った。


でも、夢は覚めなかった。






いつまで経っても。


踊れない私なんて、私じゃなくて。

もう何もかも嫌になったとき、1人の男の子が病室を尋ねてきた。





「ファンです」

そう言って。






学校には、
「ちょっとだけ入院して復帰するから!」

なんて嘘をついているからこそ、


こうやって来てもらえるんだ。






「ファンです」

この一言が嬉しかった。


度々訪れては、学校の話をして帰っていく彼が、私のちょっとした心の支えだった。






まだそこには、踊れていた私として、存在できている気がして。



「今度は文化祭のステージかな?」

「そうだね」

「それまでには治る?」

「頑張るよ」

「うん、楽しみにしてるね」

「ありがとう」


そんな話をして、決まって彼のハマっているゲームを覗いて、それで、、

「またね」






でも私は、ある日、耐えきれなくなって言っちゃうんだ。



「私ね、もう踊れないの」

「え?」

「本当は、体の調子良くなくて…」

「そ…そうなんだ」

「ごめん」

「謝ることじゃ…」
その日を境に、彼が来る事は日を追う事に少なくなって…





やがて、来なくなった。

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