可愛いドレスを着て、
キラキラなステージで歌って踊って、
たくさんの人が拍手や歓声をあげる。
そんな華やかな世界に憧れた。
どうしても、そこに行きたくて、
ダンスを始めた。
可愛くなる努力をした。
そのおかげで、学校ではまあまあな有名人だった。
“ダンス部のダンス上手くて、可愛い子”
として。
「ファンです!!」
って言ってくれる後輩や、
「今日のダンス良かった」
ってメールしてくれる同級生。
文化祭も、ちょっとした地域のお祭りのステージも、必ず見に来てくれる子とか、、
嬉しくて。
あぁ、こういうことなんだ。って。
将来絶対、芸能界に入る!って。
…私の人生まだまだこれからだったのに。
突然の余命宣告。
もう踊れない。とか何事ですか。
夢なんだと本気で思った。
でも、夢は覚めなかった。
いつまで経っても。
踊れない私なんて、私じゃなくて。
もう何もかも嫌になったとき、1人の男の子が病室を尋ねてきた。
「ファンです」
そう言って。
学校には、
「ちょっとだけ入院して復帰するから!」
なんて嘘をついているからこそ、
こうやって来てもらえるんだ。
「ファンです」
この一言が嬉しかった。
度々訪れては、学校の話をして帰っていく彼が、私のちょっとした心の支えだった。
まだそこには、踊れていた私として、存在できている気がして。
「今度は文化祭のステージかな?」
「そうだね」
「それまでには治る?」
「頑張るよ」
「うん、楽しみにしてるね」
「ありがとう」
そんな話をして、決まって彼のハマっているゲームを覗いて、それで、、
「またね」
でも私は、ある日、耐えきれなくなって言っちゃうんだ。
「私ね、もう踊れないの」
「え?」
「本当は、体の調子良くなくて…」
「そ…そうなんだ」
「ごめん」
「謝ることじゃ…」
その日を境に、彼が来る事は日を追う事に少なくなって…
やがて、来なくなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。