驚いた拍子に隆弘を抱きしめる腕が緩くなる。
隆弘が慌てて片手で私の腕を腰に巻きつけた。
再び沈黙が続いた。と思ったら
また隆弘が口を開く。
私は、謝ってくれた(?)こと、自転車に乗せてくれたこと、そして、いつもありがとう。の意味を込めて言った。
さっきまでの空気とは打って変わって、いつもの空気になった。
そんなことを考えていると
いつもそんなこと言わないくせに、急に言ってくる。
その瞬間……今度は自転車から落ちてしまった。
そう言って隆弘は、尻もちをついている私に手を伸ばす。
…で、また乗せてくれるかと思ったら、ぴゅーっと先に行こうとする。
珍しく正論を言われて、目を泳がせる。
その間に「じゃーな」と言って隆弘は先に行こうとした。
そんな隆弘の背中を
と叫びながら追いかけた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。