めめside
はぁ・・・
最近はこの時間が1番憂鬱。
小さい頃から夢だったアイドルに
どうしてもなりたくて
やっと入れた事務所とグループ。
俺が入る前からふっかさんとあべちゃんと舘さんは
アイドルやってて、俺とラウが後から加入した。
ふっかさんたち3人は元からファンがいて
ラウもセンターですぐにファンがついたけど
俺は数人だけ。
その数人も不人気メンバーが好きなだけで
俺を見てくれてはいない。
握手会ではすぐに暇な時間がやってくる。
いつも隣の列を眺めながら時間をつぶす。
今日だって俺らのファンは少しだけで
ほとんどがコラボグッズ目的。
特に俺の列は人が少ないから
グッズだけが欲しい人ばかり。
今日は1回も握手してない。
握手しない握手会って笑えちゃう。
みんなは握手しながら楽しそうにおしゃべりしてる。
あーあ、もうつらいや笑っ
そんなことを考えていると俺の列に
1人の男性が入ってきた。
男の人か、どうせグッズ目的だろと思っていると、
その人は少し手前で立ち止まった。
めちゃくちゃお洒落で
綺麗な顔、スタイルも良くて
俺なんかよりアイドルに見える。
でも彼は顔を真っ赤にして少し俯いてしまった。
精一杯明るく笑顔でやってみた。
彼はとぼとぼと近寄ってきた。
期待しすぎてはダメだと分かっていても、
この反応、俺のこと見てくれてるのかな?
そう言って顔を上げた彼と目があった瞬間
一気に彼に惹き込まれた。
憂鬱だったことを忘れて
すぐに彼の手をとった。
あぁ、やっぱり俺のことなんて見てくれてない。
期待しちゃったぶんちょっとつらいや笑っ
これは期待していいんだよね?
俺のファンになってくれるってことだよね?
めちゃくちゃ嬉しい。
ちゃんとした俺のファン。
初めてのファン。
どうしよ嬉しすぎる。
そういって微笑んでバイバイという
彼から目が離せなかった。
また来てくれるかな?
彼の笑顔と声が頭から離れない。
気がつくと握手会はおわっていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。