人生万事塞翁が虎
一人の少年______中島敦が夕陽を浴びて立っている。
やがて、静かに目を閉じる敦。
夕陽の中、まだ目を閉じたまま立っている。
孤児院院長
出ていけ穀潰し!!
お前などこの孤児院にもいらぬ!!
孤児院職員
どこぞで野垂れ死にした方が世間様のためよ!!
爛々と輝く危険な目で周囲を見渡す敦。
気配にはっとして振り向く______が、
バイクが音高く通り過ぎていくだけ。
軍警らしいガタイのいい兵士が、
隊列を組んできびきびと行進していく。
と意気込んでいた矢先、
黒のジップアップハイネック?を着ていて
性別がわからない子供が通りかかった。
いきなり「おかか」と言われ、混乱する敦。
と思っている敦に、希望の光(?)が差し込んだ。
そう。鮭の匂いだ。
ぐううう
と言い、鮭おにぎりを三つ貰った敦。
なんとなく「しゃけ」は肯定なんじゃないかと、
考え始めた敦。
などと考察をしていたら、性別のわからない子供が
地面に文字を書いていた。
〈私の名前は狗巻あなたの下の名前(漢字)と言います
諸事情によりおにぎりの具で
会話していますがお気になさらず〉
などと自己紹介をしていると、川の方に物陰が...?
バシャン
それの正体に気づいたあなたの下の名前(漢字)は川へ飛び込んだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!