「っテオくん…っ!」
思わずそのシャツを抱きしめた。
これがテオくんなら。
そんな馬鹿な思いも俺の心臓を締め付ける。今にもはち切れそうな心臓を胸に抱えて、いっそこのまま潰れてしまえばいいのに。なんて思った。
「好き、好きなんだよ…」
「…なにしてんの」
戸惑いと冷たさを纏った声が聞こえた。
「て、テオくん…っ、」
「それ俺のシャツだよね?」
「これはっ、」
「俺のこと好きなの?」
「っ…!」
突然の問いかけに心臓がバクバクと跳ねている。
「なんだそれ」
テオくんの声に思わず顔をあげた。
テオくんの目はいつも俺を見てる優しい目じゃない。まるで人を傷つけるために用意されたような目。その目と俺の目が会った瞬間分かってしまった。あぁ、テオくん俺の事…
「気持ち悪」
そのたった一言で俺の心臓は血を流す。ドクドク、ドクドクと。
「俺、」
「それ返せよ」
俺の腕から乱暴にシャツを剥ぎ取り、テオくんは自分の部屋に入って行った。
視界が歪む。思わず俯くとポタっと涙が零れた。
涙は止まらない。心臓から流れ出す血が目から溢れ出すように。心臓は悲鳴をあげている。
もう限界だ。家を出よう。
震える脚で立ち上がる。
震える手で荷物を詰める。
震える声で呟く。
「…さよなら、テオくん。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。