じんたんのか細い声がしっかりと耳に届いた。そんな事なら聞こえない方が良かったのにな。
呆然とする心とは正反対に頭は冷静で理由を聞かなければ、と思った。
「…なんでそうなるの?」
俺の声は少しだけ震えていた
「ずっと前から言おうと思ってた」
じんたんの声はしっかりとしていた
「俺の事、嫌いになった?さっき俺に好きって聞いてきたのは…なんで?」
俺をどん底に突き落としたかった?
その言葉は口から発せられることはなかったが。
「嫌いなんかじゃ、ない……いまでも好きだよ」
好きが嫌いになるのは仕方が無い、俺には止めようがない。
でも、でもまだ好きなんだろ?まだ好きなのに別れなきゃいけないのはなんでなの?
俺に同情してそんなこと言ってるの?
同情なら要らない。そんな優しさ望んでない。
いろんな感情がグルグルと頭の中を回って、感覚が麻痺していく。
「最後に一度だけ、抱かせてくれないかな」
色々考えてたくせに、俺の口から出た言葉は実に情けないものだった。
じんたんの本心を聞くのが怖くて最後なんて言って
馬鹿みたいにじんたんに、じんたんへの気持ちに縋り着いている。
俺の震えた声はじんたん耳に届いたようで、じんたんは小さく頷いた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。