第21話

お墓参り
321
2020/04/29 23:27

私は樹吹のお墓参りに来た。





花村すず
ねぇ、樹吹?


私ね、ずっと渡したかったものがあるの。



もう2月だけど……

クリスマスプレゼント。




あげてなかったでしょ?




入院中、暇すぎてマフラーを編んでたんだ。



だって、樹吹が来るの少なくなったから。


ふふっ。






もし、私が病気のままだったら、私が事故にあってたのかな。




樹吹…………


今でも私は怒ってるよ?




何でそんな勝手なことしたのって。




怒りたいよ。


でもさ、怒っても樹吹は帰ってこない。


だから私、樹吹の分まで背負って生きる。


検察官の夢を叶えるから。


あの日見た夢で樹吹がなんて言ってたのか分かったよ。



「周りの人を信じて生きろ。」

って言ったんだよね?




あの日、あの夢を見れてよかった。



それと、もう一つ、私は夢を見たよ。



樹吹とクリスマスデートをする夢。


夢だけど、楽しかった。


何となくしか覚えてないけどね。


でも、一つ覚えてることがある。


「大好き。死ぬな。生きろ。生きろ。」

ってハグしながら言ってくれた。





何で神様はこんな不公平なのかな。

いや、不公平ではないのかもしれないけど。



私は2人でもっと色んなところに行きたかった。


そんなこと、言っても……ね。


樹吹からもらったクリスマスプレゼント。


ネックレスは飾って、大事な時につけてる。


ブレスレットは毎日つけてるよ。



樹吹と一緒に入れる気がして、幸せなんだ。



どうしよう……


涙、止まらなくなっちゃう。


……また今度来るね。



じゃあ、バイバイ。

さようなら。


なんて悲しい言葉は伝えたくなかった。





樹吹もそうだと思う。



手紙に"さようなら"という言葉は使われていなかった。



私たちには、

"じゃあな。"

"じゃあね。"

"バイバイ!"


の方がしっくりくる。



安心する。





だから、私は樹吹にさようならは言わないよ。








樹吹、また来るね。





そして、私は歩き始めた。




涙を必死にこらえながら。




でも、地面に向かって涙がポロポロと溢れ出す。




きっと、この涙は止まることを知らない。












私はまた上を向いて歩き始めた。

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