第15話

樹吹が死んだ真相
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2020/01/03 02:32
お母さんはアップルジュースをコップにつぎ、私と佳奈さんの前に置いた。




なんとも言えない気まずい空気が流れる。




佳奈さんはうつむいていて、表情がよく見えない。




佳奈さんは何を話すのだろう。











この重い沈黙を破ったのは、お母さんだった。



お母さん
話、聞かせてもらえるかしら。

佳奈さんは頷いた。
町田佳奈
私は……樹吹に生きてて欲しかったんです。

うん……




それはみんな同じでしょ?

町田佳奈
樹吹はすずと付き合ってから、すごく楽しそうだった。毎日、毎日、すずの話をして。
もちろん、私も嬉しかった。

毎日……私の話を?

町田佳奈
でも……病気が進行して、余命わずかってなったとき、樹吹はずっと考えてた。すずのために俺がしてあげられることって何があるかって。
そんなこと考えてくれてたの?

樹吹が?
町田佳奈
そんなとき、ある人が訪ねてきた。


え?

ある人?

町田佳奈
来栖くるすさん。
花村すず
来栖さん?


私は思わず、聞き返してしまっていた。


お母さんも不思議そうな目をしている。






佳奈さんはまた頷き、話し始めた。
町田佳奈
すずの病気が悪化して入院した頃に樹吹は病室に行ってた。私もお花を持って行ったの。そのとき、病室に来栖さんが来た。

……それが出会い?




そもそも、来栖さんって誰なの?
町田佳奈
それから、来栖さんは自分の能力について話し始めた。
花村すず
何?
町田佳奈
自分は人の命を取り替えれる……って。

……え?


人の命を取り替えれる……?





何を言ってるの?

町田佳奈
今の君はそんな気持ちだって言ったの。実際、樹吹は……そう思ってた。
すずの病気が治ることを強く望んでた。


そんな……



じゃ、じゃあ…………!!

町田佳奈
そこからは私も知らない。病室を追い出されちゃったから。
私は止めたけど、樹吹は意志を曲げなかった。その2ヵ月後、樹吹は横断歩道を歩いていて、意識を失った。そこにトラックが来て……樹吹は死んだ。
命を取り換えたというよりは、すずの病気を樹吹が引き取ったと言った方がいいかもしれない。

樹吹は…………私のせいで死んだんだ。



佳奈さんの言う通りだよ。




私は愛する人の命を奪った。











私が…………




樹吹を殺した……


町田佳奈
あんな伝え方をしたのは悪かったと思ってる。でも、私は……抑えられなかった。樹吹がもう帰ってこないなんて……信じられなかったの。
花村すず
ううん、佳奈さんは何も間違ってない。全部……全部…………私が悪いの。私のせいで……樹吹は…………
私が……樹吹を…………殺したの…………
お母さん
すず!!

私は2階の部屋に閉じこもった。

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