さすがの竹間も、これには戸惑っているようだ。
その問いに、文香は再び頷いた。
相手が目の前にいるとは、まだ言えないが――できるなら、心のこもった手紙を書きたい。
そう、本気で思ったのだ。
ぎこちない空気が、二人の間に流れる。
竹間は、文香には他に好きな人がいると思っているようだ。
今はそれを訂正したくても、はっきりとはできない。
焦れったい思いを持て余しながら、文香はもう一度考えた。
そして、心を決める。
居たたまれず、文香は席を立ち、逃げるようにして部室を後にした。
心臓が、ひどく暴れている。
竹間は部室の外まで出てきたが、それ以上は追いかけてこなかった。
***
翌日、妙にそわそわした二人が、文通部にいたという。
文香が無事に恋文を渡せたかは――神のみぞ知る。
【完】
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。