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第10話

結末は、神のみぞ知る【完】
1,401
2018/11/05 14:11
さすがの竹間も、これには戸惑っているようだ。
竹間 信親
竹間 信親
あー……それは、僕も書いたことがないから。
教えられるかな……
藍原 文香
藍原 文香
そ、そうですよね! 無理を言って、すみません……
竹間 信親
竹間 信親
藍原さん、好きな人がいるの?

その問いに、文香は再び頷いた。


相手が目の前にいるとは、まだ言えないが――できるなら、心のこもった手紙を書きたい。


そう、本気で思ったのだ。
竹間 信親
竹間 信親
そっか……。
参ったな
藍原 文香
藍原 文香
え?
竹間 信親
竹間 信親
僕が教えることは多分ないし、藍原さんが素直な気持ちをぶつければ、相手は嬉しいと思う
藍原 文香
藍原 文香
……わ、分かりました

ぎこちない空気が、二人の間に流れる。


竹間は、文香には他に好きな人がいると思っているようだ。


今はそれを訂正したくても、はっきりとはできない。


焦れったい思いを持て余しながら、文香はもう一度考えた。


そして、心を決める。
藍原 文香
藍原 文香
それなら、先輩が引退する前までに書き上げて、お渡ししますので……!
竹間 信親
竹間 信親
……え?
藍原 文香
藍原 文香
き、今日はこれで失礼します! 浅山さんへの返事の続きは、明日書きます!
竹間 信親
竹間 信親
あ、ちょっと待って! 今の、どういう意味!?


居たたまれず、文香は席を立ち、逃げるようにして部室を後にした。


心臓が、ひどく暴れている。


竹間は部室の外まで出てきたが、それ以上は追いかけてこなかった。



***



翌日、妙にそわそわした二人が、文通部にいたという。


文香が無事に恋文を渡せたかは――神のみぞ知る。


【完】

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