第9話

恋文の書き方を教わりたい!
729
2018/11/05 14:06
藍原 文香
藍原 文香
引退って、いつですか……?
竹間 信親
竹間 信親
他の文化部に合わせて、九月の予定。
その後は予備校も忙しいから、なかなか顔も出せないと思う
藍原 文香
藍原 文香
あはは……引退した後に何度も来てたら、変じゃないですか

文香は、ショックを紛らわそうと、敢えて笑った。


ただ、顔がぎこちなく強張っていないかが心配だ。
竹間 信親
竹間 信親
そうだね。
でも、今のままだと藍原さんが一人だから、他の部員を見つけるか、手伝ってくれる人を探し始めておいた方が、いいかもしれない
藍原 文香
藍原 文香
……分かりました

この空間に、竹間とは違う、別の人が入り込んでくる。


それには、どうしても違和感があった。


でも、近い将来、そうなるのだ。


彼との時間を、一つ一つ、噛みしめながら過ごしたい――文香がそう思っていると、竹間が手をパチンと鳴らした。


何かを思いついた時の、彼の癖だ。
竹間 信親
竹間 信親
そうだ!
僕が引退するまでに、やっておきたいこととか、手紙の書き方でもなんでも、教えてほしいこととかある?
藍原 文香
藍原 文香
……なんでもいいんですか?
竹間 信親
竹間 信親
うん。
僕も、藍原さんと活動するの、楽しいし

嬉しい言葉をさらっと言ってくれるものだ。


異性として意識されていないのが悲しくなりながらも、文香は必死で考える。


手紙、文通、それに関わるもの――文香は、はっと閃いた。


しかし、それを口にするのは、ハードルが高い。
藍原 文香
藍原 文香
手紙の書き方……なんですけど
竹間 信親
竹間 信親
ん? なに?
藍原 文香
藍原 文香
恋文……の書き方を、教わりたいです
竹間 信親
竹間 信親
恋文って……ラブレター、のこと?
藍原 文香
藍原 文香
……はい

頭のてっぺんから火が噴き出しそうなほどに顔を赤くして、文香は頷いた。

プリ小説オーディオドラマ