文香は、ショックを紛らわそうと、敢えて笑った。
ただ、顔がぎこちなく強張っていないかが心配だ。
この空間に、竹間とは違う、別の人が入り込んでくる。
それには、どうしても違和感があった。
でも、近い将来、そうなるのだ。
彼との時間を、一つ一つ、噛みしめながら過ごしたい――文香がそう思っていると、竹間が手をパチンと鳴らした。
何かを思いついた時の、彼の癖だ。
嬉しい言葉をさらっと言ってくれるものだ。
異性として意識されていないのが悲しくなりながらも、文香は必死で考える。
手紙、文通、それに関わるもの――文香は、はっと閃いた。
しかし、それを口にするのは、ハードルが高い。
頭のてっぺんから火が噴き出しそうなほどに顔を赤くして、文香は頷いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。