第4話

月の美しさ🦔
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2020/03/04 09:13
「大きくなったらゆうごくんと結婚する!」
保育園の頃、そんな事を毎日言ってたのを、彼女は覚えてるのかな。

小学校入学の時も、
「ゆうごくんいっしょのくみがいいね!」
結局同じクラスにはならなかった。
でも、毎日のように遊んでいた。

小学校卒業の夜、俺は彼女をある場所へ呼び出した。
誰もいない小さな展望台。
目の前にはとても綺麗な夜景が広がっている。
「わぁー!綺麗」
彼女はとてもはしゃいでた。
『これからずっとここ来よ。
 ここは二人の秘密の場所ね』
「うん!優吾ありがとう」

呼び方も体も少し成長したが、俺の気持ちは変わらない。

「月が綺麗ですね。」
そんなこと言っても伝わるかな。
『そうだね綺麗だね』
「それ本当に言ってる?」
『え?どゆこと?』
「ううんなんでもない。綺麗だね」
『うん!』
やっぱわかんないか。
不安と期待を胸に閉まって、また夜を眺めた。

それからお互い用事がない日は、ほぼ毎日ここへ来ていた。
そして俺は、言い続けた。 
"月が綺麗ですね"
それでも彼女は
『何回言うの笑。綺麗だけど』
本当の意味をわかっているのかな。

やがて高校を卒業した。
[今日いつものとこ来て。]
[わかった]

彼女との会話はそれが最後。
ここへ来るときに車にはねられたんだって。
俺は後悔でいっぱいだった。
なんで彼女を守れなかった。
なんでもっと彼女のことを考えていなかった。
なんで迎えに行かなかった。

なんでもっと早く気持ちを伝えていなかった。

彼女は家を出る前お母さんに言ってたんだって。
『今日優吾に言いたいことあるから早く行かなきゃいけないの!』
〈気をつけてよー!〉

俺が伝えなきゃいけなかったのに。
俺が言わなきゃいけなかった。
なのになんで…。

今夜もこの場所で夜をみながら君を待つ。
いつ約束は果たせるのかな。
今日も月は綺麗だった。

−fin−

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