「あなたー明日どこ行く?」
『んー久しぶりに海くんの運転見たい!』
「えっ//わかった!」
『おまたせー』
「ううん!乗って乗ってー」
君はこの頃暗い顔をすることが多い。
今日もいつもより顔が暗い。
『ねぇ海くん?今、幸せ…?』
「もちろん。あなたがいるから。…幸せじゃない…?」
『……』
「…あなた…?」
『……ありがとうね…!海くん!』
ドライブの後、君はまるで最期かのように、今にでも消えちゃいそうな顔で手を振っていた。
俺もあの時、もっとしっかり手を振っていればな。
その日から、彼女と連絡が取れなくなった。
3年後、
ピンポーン
「…はい」
[あなたの母です。いつもあなたがお世話になってました]
「お義母さん⁉」
「あ、あの、今、あなたは何処に居るんですか⁉」
[……]
俺は解った。
[やっぱり言ってなかったみたいね。お葬式にも居なかったし。]
目からゆっくりと滴が垂れてきた。
[あなた、小さいときから寿命が大体決まってたの。
もう、どうしたって治らない病気の。
それでね、死んじゃってたら、海人くんにあげたいものがあるって、最期のときに渡してくれたの。
今日はそれを持ってきた。
本当にごめんなさい…]
気づいたらお義母さんも泣いていた。
「お義母さんは悪くないです。」
俺は受け取った。
そこには、一枚の写真と、手紙があった。
"海くん、これを読んでるってことは、もう私はいないんだね。
どうか、新しい人を見つけて幸せになってね!
私は、海くんと居るときが一番幸せだったよ。
最後に、黙っててごめんね、この子を、守れなくて、本当にごめんなさい。
大好きだよ。じゃあね"
俺は涙が止まらなかった。
言ってくれれば良かったのに。
俺がなんとかして守ってあげたかった。
大好きだよ。
これからもずっと。
2人とも守れなくてごめんね。
−fin−
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!