"今日は、若い子から大人世代にも人気な、あなたさんに来てもらってまーす!"
いつもどおりの収録、楽しみで昨日から準備していたから、絶対うまく行くはずだった。
けど、ほんの一瞬だった。
大惨事になったのは。
〔一旦休憩入りまーす〕
〔あなたさん、ちょっとよろしいですか?〕
「はい、?」
〔今、メンバーの平野さんが事故に合ってしまいまして、病院に緊急搬送され、意識を失ってしまいました〕
「え⁉今すぐ向かわせてください」
〔しかし、この収録は出演者が多数で、滅多に全員集まることができないので…〕
「でも、絶対命のほうが大事じゃないですか!」
〔そう言われても…〕
結局最後まで収録することになり、早く終わればと、全然集中することができなかった。
前日から用意していたものが、台無しだった。
やっとのことで収録が終わり、あいさつを済ませ、すぐに車を出してもらった。
病室の扉をあけたら、1人岸くんがいた。
〈あなた。〉
「岸くん。紫耀はどう?」
〈まだずっと起きない〉
紫耀は、苦しそうに目をつぶっていた。
「きっと紫耀ならこの紐ブチって切って起きるよね、笑」
起きないわけがない。
そう、二人が同時に思ったとき、奇跡が起きた。
握っていた紫耀の左手がピクッと動いた。
「紫耀…?」
『ん…あれ…?』
〈紫耀!あーまじよかった〉
『どういうこと?』
紫耀に事情を説明すると、紫耀は笑いだした。
〈おま、笑い事じゃねぇよ〉
『俺、事後に合ったんだ。ダッセー、もっとちゃんとしなきゃ!』
「どこまでかっこいいのか。笑」
滅多にない紫耀が弱くなるのも見たかったけど、やっぱり強い紫耀が1番かっこいい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!