蒸し暑い夏の夜。
会社の飲み会で意味がわからない上司の話を相槌もうたずに聞いていると、
『ちゃんと聞きなさいよ』
同僚の北斗が足をつついてきた。
「北斗だって聞いてないじゃん」
『あ、バレた?笑』
そのクスッと笑う顔に、同時にこの会社に入ったときから一目惚れしたんだ。
『あなたこのあと二次会行く?』
「行きたくないけど行かないとまずいっしょ」
『あれいてもいなくても一緒だよな』
「ねー」
『いっそのこと二人で飲みに行こうよ』
「え…」
『嫌だった?』
「全然嫌じゃないよ。むしろ嬉しい」
『おっしゃ!んじゃ行こ』
そう言うと貴方は私の手を掴んで人をかき分け進んでいった。
神様、
今宵だけは夏の魔物に連れ去られてもいいよね。
−fin−
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。